2010年07月07日

旅のこと―ローマ、フィレンツェ

5泊6日でローマとフィレンツェに行ってきました。飛行機でたった1時間南へ飛ぶだけでピッツァもパスタもジェラートも何もかもが魔法のように美味い国、イタリアへ。ドイツのどんな田舎の小さなバーにも樽からサーバーで注がれた生ビールがあるように、ここではホテルの朝食バイキングにすらバリスタがいて絹のように泡立ったカプチーノを注いでくれる。



ローマは約4年ぶり。前回はクリスマスだったけれど今回は買ったそばからジェラートが滝のように溶け出す暑さ。赤茶けた岩肌に濃緑の松のコントラストに大理石の白、イタリアの三色旗の色。よほどの田舎に行かない限り21世紀であることを忘れられないドイツの風景と異なり、イタリアのそれは、目の眩むような陽射しも手伝って、ふいと時間を飛び越えられそうな気がする。丘の中腹、オリーヴの畑の中にぽつりぽつりと佇む白壁に赤い瓦屋根の眺めは、おそらくもう随分と昔からその姿を変えていないのではないのだろうか。



ローマではサン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂と、サン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂を見学。どちらもローマ屈指の美しい回廊があることで名高い。サン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラはローマの中心街からは少し離れるのだけれど、海辺の街オスティアへ向かう路線が通っているのと、すぐ近くに一度行ってみたいとは思いながら本当に行けるとは思ってもみなかったリストランテがあって足を伸ばす。瑪瑙で作られた飾り窓に南国の光が差して美しい。
かれこれ10年近く前に買った雑誌に「本場」ローマのカルボナーラの話が載っていて、行ける日が来るとはゆめゆめ思わないながらもカルボナーラ狂いとしては読んでいるだけで涎の出る話で、なぜかドイツまで持ってきてしまっていたその切り抜きに載っていたお店に、今回はとうとう行ってきたのです。スパゲティではなく細めのうどんのようなもちもちの手打ちパスタに、炒めたベーコンと卵黄とチーズに少量のバターを絡めた「だけ」のシンプルかつ濃厚な味に言葉もなく。



フィレンツェは花のドゥオーモ、ウッフィツィ美術館とメディチ家の礼拝堂、サンティッシマ・アンヌンツィアータ教会、ピッティ宮殿内にある衣装博物館を回る。とにかく蒸し暑い上に、人と車とバイクとでどこもごったがえしていて、くたくたでおそろしく不機嫌に過ごしてしまったけれど、そんな中でもドゥオーモの繊細な華やかさ、サンティッシマ・アンヌンツィアータ教会の祭壇の濃密な空間、贅を尽くしたメディチ家礼拝堂の重厚さはくっきりと瞼の裏に焼き付ける。17世紀当時には金より貴重だったというラピスラズリがここでは瑪瑙や大理石に混じってふんだんに象眼や彫刻に使われていてくらくらした。ボッティチェリの金の繊細な線も、あれは印刷物や映像では絶対わからない。本当に行けてよかったと思う。
と、ここまでは基本的に夫と子守りを交代しながら一人ずつ観に入ったのだけれど、衣装博物館だけはドイツ対アルゼンチン戦と重なったために夫が途中で離脱して子と2人で入ることになった。博物館の入場券でピッティ宮の庭園も観られるので、いざとなったら衣装は諦めて庭で遊ぼうと覚悟を決めて子に「お城の中のたくさんお洋服が並べてあるところに行きたいんだけど、一緒に行ってくれる?」と聞くと、意外にも「うん」とのこと。で、入ってみると「これはかわいいの」「あおいのはきれいなの」「これはいや」「くろいのはかわいくないの」としっかり楽しんでいるではないですか。いやいやこれは嬉しい大誤算。しかし君はパパのサッカーじゃなくて?ママ寄りなの?そっちの世界に行くの?
その後、人気のないピッティ宮のボーボリ庭園の木蔭でゆったりと穏やかに過ごす。



観光名所になるようなカトリックの旧い教会は、基本的にどこも露出の多い服では入れない。本当はサンダルもだめ。でもあまり厳しいと夏にイタリアに来る観光客の9割以上は門前払いになるので、大きな教会の前では大判のスカーフを売っていたり、中で紙製のポンチョを配っていて、それで肩や太腿を覆えば一応OKということになっている。手術着のようなペパーミントグリーンのポンチョをひらひらさせた女性が行き交う大聖堂の中は奇妙な眺め。フィレンツェのドゥオーモを訪れたのはちょうどブラジル対オランダ戦のあった日だったんだけど、だからって黄色と緑のショートパンツ×タンクトップの上からブラジル国旗をマントにして羽織った女性には心からアンタそれは違うだろうと叫びたくなったよ。



去年夏休みらしい夏休みがなかった夫の「海行きたい」という要望と、おそらく第2子が生まれたらまたしばらく(帰省を除けば)長い旅行はできないであろうことから、行きたいけどまだ行っていないヨーロッパの都市が山ほどある中からフィレンツェを選び、それとローマ近郊の海とを組み合わせて夫がオーガナイズしてくれた(我々の旅は基本的にいつもそうですが)今回の旅行。ゆったりめの日程であったとはいえ、ぎらぎらと暑い中での都市間の移動、宿の移動は、子連れでも身重でもなくてもやっぱりくたびれるもの。ちびすけを連れての旅には慣れたつもりでも、あれがしたいここに行きたい、あれが食べたいこれは嫌と自己主張まっさかりになってきた息子を連れて、これまでのように「大人向け」の美術館巡り史跡巡り中心の旅をするのは今回を潮にそろそろお休みだな、と思いました。今までは基本的に親の行きたいところを優先しつつ、合間に公園や動物園や子どもの好きそうな場所を織り込むことで折り合いをつけていたわけですが。旅の最後はオスティアの海辺に面したホテルで、出発の朝、桟橋を散歩しながら「ずーっとうみであそぶの、かえるのいや」とつぶやく息子を見て、これからは子どもが目一杯遊べることが旅の最優先事項だなあ(何を今更、と思われるかもしれませんが)、そして2人目が産まれて1〜2年のうちには日本に引き揚げるつもりでいることを思えば、何日かかけてヨーロッパの美しい街並や寺院や城を堪能できる旅行はこの先もう何年も何年もないかもしれないんだなあ、とかなり感傷的な気分になったのです。一生二度と出来ないわけではなし、旅の行き先や楽しみかたが変わるだけのことだといえばそれまでなんですが、これまでのように「次に来る時にはこことここに行っても一回あそこに行ってあれを食べてあれとそれを買って帰ろうね」とはもう気楽に言えないんだな。たぶん。ローマの朝市には行ってみたかったな。ヨーグルテリアにももう1回か2回は行きたかった。



でそんな旅の注意散漫からか、今回はこまごまといろんなものをなくしました。夫のMP3プレイヤー、サングラス、フィレンツェで買ったばかりの帽子、封を切ったばかりの子ども用ウェットティッシュ(ドイツの3倍くらいのお値段なのにー)、子ども用プラスティックのマグカップ。子連れの外出にはよくあることとはいえ今回はちと多すぎたな。



帰宅した今はせっせと蚊に刺された跡に薬を塗っています。夏のフィレンツェは蚊が多いからとは聞いていて、それならばと用意した虫除けに「妊娠中の方は使用しないでください」と書いてあることに現地で気づき、その場で妊婦対応の虫除けを探せるほどの語学力もなくて、夫と息子がほぼ無傷なのを横目に人柱のごとく刺されまくってきました、ええと全部で16か所ほど。妊婦でも大丈夫なアロマオイル処方のスプレーを教えてもらったのですが出発前に調べておくべきでした。前回の目薬に続きこんなものも使えないとはね。
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