2007年12月30日

生々しさ

要するに男友だちだろうが女友だちだろうが、電話が掛かった時、手紙が来た時、逢えるという時、ちょっとどきどきする感じがなければいやだ。相手の美しさにでも才能にでも優しさにでも、何でもいいけれど、胸がさわがなければ友だちとはいえないと思う。

(岸田今日子『子供にしてあげた話 してあげなかった話』より
 「女友だち男友だち」)




礼装の中に浴衣で紛れ込んでしまったようで
あるいは皆が夏服を着ているというのに
一人ぶ厚いコートでうろついているようで
自分がどうも場にそぐわない人間であるような気がして仕方ない
そんな症状も次第に薄れて気付けばはや年末
日本の本を買い、日本の服を買い、日本のコンビニでお茶を買い
リハビリのように少しずつ日々に慣れてきたところ。



かつて同じ学舎に居た者同士、というだけでは
帰るたびに「逢おう」と連絡を取り合う理由にはなりえず
同窓という、ただそれだけで酒を酌み交わすことに
ろくろく懐かしさも居心地の良さも感じられなくて
心から逢いたい人と思える人にだけ連絡を取っていて
それ以外の人の消息になど殆ど興味を失くしていたはずなのに

偶然連絡がついて逢うことになったかつての旧友の話を聞き
名前さえ忘れていた同級生の近況を聞き
年月が流れたことを互いに確認しあうような作業は
存外に苦痛ではないどころか案外と楽しかったりもして

年齢を重ねるということは
他者との間に横たわる距離、態度、温度、全てにおいて
様々なヴァリエーションが存在することを知り
それらを身につけてゆくことであるよ、と確認したのでありました。

胸がどきどきしなくたって
別れが淋しくて何度も振り返ってしまうような仲でなくたって
いつかまた会うときまでの互いの息災を願い合い
互いの中に自分にはない何ものかを見つけ合うことはできるのだし
そんな友と囲む食卓もまた格別に美味なものであるのだから。



昨日は高校時代の恩師に蟹をお腹いっぱいご馳走になり
夫との定時連絡を済ませた後
胸さわがせる心愛しき友人と電話でひとしきり歓談。
誰と会うのが一番楽しいとか
誰と話すのが一番刺激的だとか
順位や優劣をつけることに意味なんてなくて
多種多様な食物の中から
自分の嗜好と健康状態に相応しいものを選んで
丁寧に咀嚼して消化し、吸収して自分の血肉と成す
そういう過程とおんなじなんではないかな、と思う。



備忘録。電話の間に思い出せなかった言葉は
「意は毘廬の頂寧を踏み、行は童子の足下を礼す」
でした。出典はどこなんだろうな?

久しぶりに漢文が読みたいのに
高校時代の教科書はもう処分してしまったのでした。
posted by YUKINO MATOI at 16:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月21日

離すためにつながれた手

並んで歩いて行くためではなく
危ういものを繋ぎ止めようとするのでもなく

あなたなしで 一人ずつで 互いが
きちんと歩いてゆけることを確かめるために

またいつか
再びつながれる日があることを伝えるために

ぼくらは手を握り 離す

背中が遠くなっても
道の先で迷子になっても
飛べなくなって歩くことさえ叶わなくなっても
いつかどこかでまた手をつなげるのならば
笑って その手を 離そう
posted by YUKINO MATOI at 02:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月20日

違和感

異物になるのは当たり前だ。
異国にいるのだから。
でも、たとえそこに在るべき者ではないのだとしても
どんなにそれを思い知らされたとしても
そんな悲しみや憤りなど吹き飛ばしてしまえるほど
心愛おしく美しく、慕わしい場所がこの世の中には存在する。

望んでそこを選んで暮らすようになって3年が過ぎたけれど
かといって自分が(あらゆる意味で)
ずっとそこに留まっていられるような人間ではない
ということはよく分かっていて
母国のことを思うたびに、母国の土を踏むたびに
いつかここに戻ってくることを当然考える。

1年半ぶりの風景は私を戸惑わせるものに満ちていて
四方八方から日本語が飛び込んでくることも
どれだけ高いところから見渡してみても
見渡せる限り限りどこまでも街が続いているということにも
エスカレーターでは片側を開けていなければいけないこととか
店に入るときにお店の人と挨拶しなくていいことだとか
その全てが、かつて自分がその中にいた時のことを
ろくろく思い出せないほど異質なものに感じてしまう私は
母国にいながらにしてやっぱり、異物なんだろうか、と
新宿の雑踏でたじろぎ、たたらを踏み、立ち止まる。



こんなに暖かいのに汗ばむほど暖房効かせてるデパートも
団体名とスローガンを連呼するばかりで
具体的に是として掲げてるものが全く見えない街宣車も
少し買い物しただけでたちまち大量のゴミが発生するシステムも
落ち着けるカフェやベンチがかなり探さないと見つからなくて
ただぼうっと座って少し休む、それだけのことが全然できないことも
全部居心地悪くてなんだか変なんだってばー!うわーん!



一晩寝れば比較的あっさりと
「ああ、こんなものか」と
慣れてしまう程度の違和感ではあるのですがね。



各駅停車の小田急線で向かいに座った女子高生2名の会話に
KYなる単語を始めてリアルに聞き取ってしまい
「あれが噂のKY!」とひそひそ盛り上がってしまう人、約2名。
空気読める/読めないを略してKYだなんて
週刊誌の中吊り広告あたりに勝手に載ってるだけの
白々しい冗談かと思ってたのに
いとも簡単に血の通った用法に遭遇してしまったよ。
posted by YUKINO MATOI at 17:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「はじめて」

3年ぶりの日本の冬、3年ぶりの故郷の冬です。
出発前の準備に追われて
酸欠の金魚のようにぱくぱくしていたのが
つい先日のことだとは信じられないほど、ここは穏やかです。

フランクフルトに着いてからというもの
空港独特の高揚感と寂寥感の混じった空気に始まって
低いエンジン音の響く機内から成田空港の到着ロビー
新宿の雑踏、小田急線、東京駅、丸善、日本橋の三越
そして長岡と行く場所行く場所全てが彼にとっては初めてで
外の気配が変わるのを敏感に察知しているかのように
中の人は落ち着きなく、興味深げにばたばたと動いています。

親の欲目だとかを抜きにしても
外の人間が思っている以上に
生まれる前の子というのは
細やかに、かつおおらかに外のことを感じ取り
既に何かを少しずつ学び始めているのではないかと思うのだけれど。
posted by YUKINO MATOI at 16:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月05日

悪意と悪戯

理由なく人が人としてまともな扱いを受けていない状況に
当事者として遭遇するのはもちろん極めて不愉快なことに決まっているのだが
ニュースや映画や小説や、又聞きの出来事として出会うのも恐ろしく苦手で
そのような場面を見聞きするたびに酷く落ち込み、悲しく、気分が悪くなり
後から思い出すだけでも頭に血が上って腑が煮えくり返るようであったり
逆に血の気が引いて手足が冷たくなり何も考えられなくなってしまったり
否、「理由なく」と最初に書いたけれど、どの状況下にも「理由」はあって
私が本当に動揺してしまうのは
彼の人がまともに扱われていない、ということの非道さに、ではなく
そのような「理由」で、たかだかその程度の「理由」で
人はどこまでも無神経に、残酷に、横暴になることができる、という事実に
途方もなく打ちのめされてしまうから、なのだ。

どんな些末なことでもいいから口実を見つけて攻撃してしまいたい、という衝動は
決して特殊な欲求ではなく、多分に自分の中にもあって
それは閉塞感や鬱憤や苛立ちからのみ生まれるのではなく
ささやかな悪戯心からも生まれ得る、ということも実体験として知っていて
だから時には茶碗も割るし怒鳴るし打ったり噛み付いたり暴れたりもするけれど
少なくとも見ず知らずの他人に矛先を向けない程度の理性は持ち合せているつもり。

「良心が咎める」ということくらい疾うに学んでいなくてはならない年齢のくせに
理由にならない理由を振りかざして、その振る舞いを正当化しておいて
そうやって安全なところから石を投げつけるような行為に及ぶ人を
私は心の底から軽蔑する。

しかしまあ軽蔑されたくらいではきっと痛くも痒くもないだろうし
かといって正面から相手をしてはますます攻撃の口実を与えるだけなので
ではどうやったら奴らが己の非を思い知るのか、ということ。
一番簡単なのは立場が逆転することなんだけど
往々にして簡単には逆転し得ない立場にいることを自覚している奴に限って
そういう粗暴な振る舞いにでるものだからもう、口惜しいったら。
posted by YUKINO MATOI at 05:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

あるまじきこと

あるまじきこと その1
日に日に膨れてゆく腹部への注意が足らず
(今行っている病院では腹囲を計測しないので)
大鍋を火から下ろして戸棚の上のほうへ手を伸ばそうとしたら
鍋の縁でお腹を火傷。
肌が少し赤くなっただけで中身は無事。

あるまじきこと その2
カーテンやクッションカバー、テーブルクロスなどを制作して
かれこれ2年ほどのお付き合いになるカフェレストランから
よく確認もせず受注してしまった仕事がベルベットの特大カーテン。
エントランスの冷気避けなので重く、厚く、長く、幅広く
さらに裾に錘が入るので量ってみたら1枚なんと5kgなり。
ぜえぜえ言いながら縫い、検品して畳むのはキティに手伝ってもらう。
posted by YUKINO MATOI at 04:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月02日

マイベスト菊地成孔

http://www.kikuchinaruyoshi.com/dernieres.php?n=071128034050

お願い誰かこれ一部押さえておいてください。
素敵すぎて耳鳴りがするわ。
posted by YUKINO MATOI at 19:02| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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